理事長所信


2013年度 公益社団法人 酒田青年会議所
第47代理事長 赤谷 一典

はじめに

1976年10月29日午後5時40分頃に酒田市中町から発生した火災は、強風にあおられ大量の飛び火や火の粉が発生し、辺りを焼き尽くしていく大きな火災となりました。市中心部の商店街が一夜にして灰燼と化し、1767棟が焼失、死者1名、被災者3300名にも及ぶ酒田大火となりました。当時0歳児だった私は、母親に抱かれてその様子を見ていたと聞きました。災害発生の翌日には全国からの支援とスピーディーな行政の対応、そして多くの諸先輩方の活躍があり、わずか2年半足らずという短期間での復興宣言が行われました。

それから37年の月日が過ぎ去りました。酒田大火の年に生まれた私は現在、酒田の未来を創造する責任世代の青年として使命を与えられ、愛する故郷で0歳児の息子を育てながら暮らしています。

未曾有の大災害、東日本大震災から間もなく2年が経過しようとしています。

様々な障害があり前に進みたくても進めない被災地、癒える事のない被災者の心の傷。この現状から被災地の未来を描くにはどうしたらよいのでしょうか。まずはJAYCEEが率先して先頭に立ち、問題に取り組み運動を起こしていかなければなりません。なぜならば、その役割を担わなくてはならない責任世代だからです。震災発生直後から、早期に支援へ行動をとったのは各地青年会議所でした。たくさんの繋がりの中での、その緊急性と重要性を考えての行動です。今もまさに全国各地の青年会議所は被災地支援の運動を続けています。
取り組むべき問題や地域が違っていても、我々が目指すべきは、明るい豊かな社会です。その理念に向かい責任世代としての自覚をもって行動を起こしていかなければなりません。

いつの時代も未来を切り拓いていくのは誰なのか。
率先して行動を起こしていくのは、我々JAYCEEである、と

「責任世代である我々が地域を創造する。」


酒田まつりの未来

酒田まつりは、慶長14年(1619年)から一度も欠かすことなく続いている歴史と伝統のあるまつりです。酒田大火後の復興を機に名称を変え、市民のまつりとして酒田まつりと呼ばれるようになりました。盛大に行われた創始400年祭から創始500年祭へ向けてスタートしたこの数年、我々は復活した山鉾を市民と共に動かしまつりに参加してきました。この運動を後世へと繋いでいくために、今後の我々の運動の方向性、即ちまつりの未来を考えていかなければなりません。

昨年度は宵祭りを日和山公園の地で開催し、酒田青年会議所は酒田まつり実行委員会の祭事・イベント部の中心となり、企画・運営を行いました。多くの参加団体の協力により成功をおさめ、新しい宵祭りの一歩を踏み出したと思います。しかし、非常に多くの来場者を記録した反面、企画・運営に関わる市民の協力者が我々の他に少なかったという課題も出てきました。酒田まつりは一体誰のためにあるのでしょうか。それは現在では間違いなく酒田市民のためです。しかし、市民のためのまつりであることを未だに皆が認識していないのではないでしょうか。企画・運営の段階から自発的に行動し喜びや感動を分かち合い、酒田まつり実行委員会のメンバーを含め、他にもっと多くの市民の力で企画・運営を行い創り上げていくことが必要です。そうなれば、まつりは未来へ向かってさらに市民が率先してまつりを創り上げる市民主導型へと進化していきます。2013年度は、市民主導型を実現するために我々が先頭に立ち、より多くの市民から企画・運営の段階から参画して頂きます。

そして、我々が酒田まつりに参加する際に製作してきた山鉾は、市民を巻き込むことによって、酒田まつりの中心的役割を持つ山鉾として未来へ伝えていきたいと考えます。我々は山鉾が、まつりの日に町中を練り歩いている姿を再び現実とするために日々運動しています。それを成し遂げるために、市民と共にまつりの未来を考え行動していきます。市民が天に向かってそびえ立つ山鉾を誇らしげに動かしている姿が、まつりを最大限に盛り上げると確信します。

2011年の北前船シンポジウムでの提案から酒田青年会議所でも提唱している「酒田歴史資料館構想」は、多くの歴史資料が展示・収蔵される中で、山鉾がその一部となり、酒田の歴史と伝統を学び酒田市民が誇れる施設としての目的を持ちます。酒田商業高校跡地の場所の活用も視野に入れ、それは将来、酒田を代表する場所のひとつとなる事は間違いありません。酒田まつりの際には山鉾の発着地点として機能し、歴史と伝統の先にある誇れる未来を創造する中心的存在となることも望まれます。そのために、山鉾製作の場所としての機能も必要であると考えます。我々は、「酒田歴史資料館構想」の実現に向けて市民と共に運動を起こしていきます。

自立した青少年育成

青少年育成事業で小学生を対象にした事業は数多くありますが、義務教育を終えてこれから社会へ出て行く年齢の子どもたちも事業の対象者です。学校の授業や部活動以外の環境で、夢を叶えるもっとも重要な時期の青少年たちが、気づきや学びを得る機会が必要であると考えます。

中学生・高校生の時代というものは、成長著しく、また多感な時期です。これから広がっていく世界に期待を膨らませつつも、同時に不安も覚えます。他人と比べることで自分の短所ばかりが気になったり、挫折なども経験します。やがて、個々が自分の人生の方向性を決めて歩き出していきます。親に守られていた時期とはあきらかに違う厳しい環境が待ち受けています。

今、青少年たちは自分の将来に対して、日々どのような夢を描いているのでしょうか。そして夢を達成するプロセスが、喜びだけでなく困難を伴うものであったならば、強い精神を持って挑戦し続けることができるのでしょうか。誰しもが経験する人生の岐路に立つとき、私も失敗をくり返しながらも何度もあきらめずに夢に挑戦してきました。今、そのおかげで自分が幼い頃から憧れていた職業に就いています。

夢を持つのは大変素晴らしいことです。しかし、それには継続性という難関が伴ってきます。一つのことを続けていくことは簡単なようで大変難しいのです。なりたい自分になるには何が必要なのでしょうか。夢を支えるのは、自立した強い精神だと考えます。

大きな夢を描いて、それを実現するためのプロセスを段階的に考えて人生設計をして欲しい。好きなものに真剣に取り組み、長所を伸ばし、自信を持って未来へと歩んでいって欲しい。自立した強い精神を持ち、夢を追い続け、いつか叶えることができると信じる今であって欲しい。青少年の時代を過ごし社会人となった我々から、伝えることができるものがあると考えます。

青少年育成事業では、社会に巣立っていこうとしている青少年たちが、自立した強い精神を育むことができる事業を展開していきます。

地域社会のリーダー

青年会議所に所属できるのは40歳までの限られた時間であり、新たな人材を発掘して共に運動・活動することで、常に組織内の会員の新陳代謝を図っています。若い時代に切磋琢磨し、魅力的な多くの人が所属する中で、互いに磨かれる組織が青年会議所の他にあるでしょうか。修練・奉仕・友情の三信条を経験することでかけがえのない時間を過ごし、地域社会のリーダーを育てていくことができるのは青年会議所しかありません。

地域社会のリーダーというと、最初から素質が備わった何か凄い人物像を思い浮かべてしまいますが、そうではなく、その時代において率先して地域の問題を解決するために運動していく、我々個人のことだと考えます。そして、我々の運動を地域に発信して理解してもらい、伝播していくことで地域の発展に繋がっていくと考えます。そのためには、JAYCEEが地域のリーダーとなることを自覚し、志高い仲間を増やし、より多くの仲間で運動・活動をしていく必要があります。その礎となる会員拡大運動は、地域社会のリーダーを育てていくために、重点課題の一つとして実行していかなければなりません。

酒田青年会議所は、2011年度・2012年度に連続して会員拡大褒賞全国第1位という快挙を成しえました。この事実は酒田の未来にとっても大変素晴らしいことです。2013年度の会員拡大事業は、会員拡大人数40名を目指し地域社会のリーダーを育てていきたいと考えます。

また、現在の酒田青年会議所は、近年の入会のメンバーが大多数であり、全体の約半分を占めます。大変多くのメンバーが所属する青年会議所になりましたが、入会したメンバーは青年会議所運動にどんな印象を抱いているのでしょうか。青年会議所特有の事業もありそこに魅力を感じるところもあると思います。一方で、時代の流れと共に地域社会が抱える問題も変化していくので、その問題を解決する運動も必要です。我々の運動は、地域や市民に受け入れられ、それらを巻き込んで展開していかなければなりません。そう考えた時に同じ地域で運動している団体を知り交流を深め、今この時代に、この酒田でどんな運動が必要であるのかを考え知ることは有効であると考えます。自己満足に浸ることなく、他の団体から学ぶべきものが多くあるはずです。

我々の運動の意義と立ち位置を再確認するために、様々な団体との交流研修事業をおこないます。

地域を輝かせる

「酒田って何があるの?」この様な質問は、誰しも一度は聞かれたことがあると思いますが、はっきりと答えることができる人はどの位いるのでしょうか。思いつかないので無いと答える、自信がないのでなんとなく説明する、こんな状況を目にした人も多いはずです。しかし、本当に何もないのでしょうか。市民が自信を持って相手に伝えることができないのは、身近にあるが故に、自分が住む地域の素晴らしさを深く真剣に考え、学び、知ることをしていないからだと考えます。酒田には誇るべきものが沢山あります。そしてそれを活かして地域発展につなげなければいけません。急激に進むグローバル化の世の中にあって地域を発展させるために、地域固有のものをそこに住む人々が理解し、発信していくことが必要です。

日本の各地域には、それぞれ独自の歴史や文化、伝統、習俗や景観などがあります。それは個々に地域特有のものであり、独自のまちづくりの根本となるものであります。そして、その地域に存在する特徴・素材となるものを地域資源として定義し、活用する考え方があります。酒田の地域資源とは何でしょうか。それは、有形無形に関わらず、自然資源をはじめ、技術・農林水産物・観光資源等です。その地域資源に、酒田に住まう人々であれば酒田でしか加えられない物語を活かして付加価値を付けて磨きあげることができます。そして、磨きあげられたものは酒田にしかない「地域のたから」と呼べるものです。

「地域のたから」は、酒田の新しい代名詞として地域発展につながっていきます。既に地域の代名詞になっているものもあれば、未だ眠っている地域資源を磨いていくことによって、新しい「地域のたから」に出会えると考えます。

酒田固有の地域資源を市民に理解して頂き、それを磨きあげることにより「地域のたから」を創造して発信する。酒田が素晴らしい地域であることを確信できるこの事業を通して、地域を輝かせたいと考えます。

「震災後」時代へ

2011年3月11日に発生した東日本大震災。それまで日本全体を覆っていた閉塞感にさらに追い打ちを掛け、わが国を国難とも言うべき状況に追い込みました。震災以降、様々な障害があり前に進みたくても進めない状況は、被災地と被災者にとって大きな問題です。そして、被災者が最も危惧するところは、時間が経つにつれて忘れ去られてしまうという恐怖感があることです。震災発生当時のことは鮮明に記録と記憶に残っても、被災地と被災者の現状は現在進行形で変わっていきます。インフラ等の物理的な復興だけでない、被災者自身の本来の心の豊かさはいつ取り戻せるのでしょうか。被災地を支援したいと願っている我々が出来る事は一体何でしょうか。

「豊かさとは何か?」と考えた時に、まず、家族の繋がりを大事にする家族のコミュニティがあり、その上に地域のみんなの地域コミュニティがあり、その先に県や国があると考えます。豊かさとは、マクロの視点から考えるものではなく、個人の豊かさの先にすべてが広がり、繋がっているものだと思います。

そうであるならば、未来へと繋がる豊かさを取り戻すために、震災後の未来に希望を持たせることがすべての出発点だと考えます。そしてそれは故郷の未来を担い、次の時代の主役である子供たちに必要なことであります。

我々も東北の一員です。多くの復興に向けた支援の形がある現在、酒田大火からの復興を成し遂げた我々の地域と繋がり、酒田であるからこそできる地域性を活かした支援をすることで、互いの繋がりから未来を創ることができると考えます。被災地の子供たちと酒田の子供たちが交流し、気づきや学びがあることで、それがひいては未来の地域の繋がりを生み、地域発展につながります。

東日本大震災被災地への復興支援として、互いの地域が発展していく、交流を通した人と人との繋がりによる復興支援交流事業を展開していきます。

責任世代としての役割

我々は一社会人として、日々企業・生業を持ち生活しています。その一方で、自ら時間をつくりJC運動を行っています。もっとも元気で挑戦できる世代である我々は、誇れる故郷の未来を創造するという大きな責任があると考えます。

近年、酒田青年会議所は100名近いメンバーを有する団体になりました。個人が地域社会の発展に貢献したいと考えるとき、それに賛同し、協力してくれる同志は何人いるでしょうか。仮に多くの同志を集めることができたとしても、長年に渡り継続していくとなればかなり難しいことだと思います。ましてや規模の大きな予算が掛かるとすれば尚更です。しかし、酒田青年会議所ではそれが実現できるのです。個々の力が集結して大きな力となり、酒田の発展の為に運動ができるのです。青年が能動的な変革を創造し開拓するために、能動的に活動できる機会を提供する場所だからです。

2014年に、東北青年フォーラムがこの酒田の地で開催されることが決定しました。東北各地の志を同じくするJAYCEEが一同に会する会員大会であります。会員の意識向上、学びや気づきを得る機会として、また関係団体や市民に我々の運動を広く発信する場としての目的があります。その東北青年フォーラムが酒田で開催されるという事は大変大きな意味があると考えます。決して経済効果や知名度向上だけでは無く、最も期待すべきことは、率先して新しい時代を創造しようとする青年達が集い、問題提起し、自ら考える場所がここ酒田である、というところにあるのだと思います。こんな時代だからこそ、英知と勇気と情熱をもって、明るい豊かな地域社会をこの酒田から築きあげようではありませんか。

また、日本海夕陽ラインシンポジウムは、昨年で24回目の開催となりました。長きに渡る運動と諸先輩方の尽力のおかげで、ミッシングリンクの早期解消に向けた運動が実を結ぼうとしていると感じられる今日であります。遊佐-象潟間の計画段階評価の現状を受けて、これから高速道路が通ることで地域の未来がどう豊かになっていくのか、その地域に住む人々が何を考えどうしていかなければならないのか、我々も一緒になって考え行動していかなければなりません。その為には、日本海夕陽ラインネットワーク協議会の継続も我々の役割であると考えます。そして、政治は国民のためにあるならば、国民が選択の責任を果たすことができるように、マニフェスト型公開討論会の開催も視野に入れていきます。有権者が真に求める判断材料を提供すると共に、政治をより身近に感じ、考える機会を我々が提供しなければなりません。

我々は酒田を故郷とする責任世代として、その役割を果たしていきます。

地域の未来を創造する

青年会議所で運動していて常に考えることがあります。私自身が酒田青年会議所に入会していなかったら、酒田に生まれ育った一人としてどのように地域と向き合っていたのか。責任世代としてどのような場所で、どんなことを考えていたのか・・・。

入会してから、たくさんの尊敬する諸先輩方と共に運動や活動をして多くの学びや気づきをいただきました。修練として自分の心身をさらに鍛え、奉仕として愛する故郷へ尽くし、志同じ仲間との出会いと運動を通して育んだ友情。そこで得たものは何物にも代えがたいものであります。そして、今後も多くの仲間たちと共に、地域と向き合い、明るい豊かな社会の実現に向けて一緒に歩んでいけることを誇りに感じています。

酒田青年会議所は、2012年11月に公益社団法人格を取得しました。
私は入会して8年目となりますが、我々はいつも運動の公益性を意識して事業を組み立ててきたと思います。今年度は、公益社団法人格を取得し具体的運動を行う初めての一年間となります。新しい時代への期待だけではなく責任も伴ってきます。
以前にも増して地域で責任ある立場の団体となった今日、我々の運動は、個人が自発的に動きだし、地域社会へ伝播していかなければなりません。

そして、その運動は地域社会を巻き込み、良き未来へと繋がっていくことを確信します。我々は、新しい時代へ向けて率先して地域の先頭に立ち運動を起こし、明るい豊かな社会に向けてキャンパスに未来を描き、創造していかなければなりません。

我々は責任世代として、信念をもって、地域の未来を創造していきます。

あなたが本当にそうだと信じることは、常に起こります。
そして、信念がそれを起こさせるのです。
フランク・ロイド・ライト

2013アニュアルレポート
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