2011年度 第45代 理事長 所信

 

社団法人 酒田青年会議所

第45代 理事長 阿部 敦




 

『 はじめに 』


 私は、2004年に (社)酒田青年会議所に入会し、青年会議所運動を浅いながらもJCメンバーと共に混沌という未知の可能性を切り拓き、個人の自立性と社会の公共性が生き生きと協和する確かな時代を築くために率先して行動し実践してきました。

  1967年 ( 昭和42年 ) 設立以来、 (社)酒田青年会議所は45年という長きに渡り、この北庄内の発展と、ここの地へ根を張る方々の幸せを願い果敢に挑戦をされてきました。改めて先輩諸兄に敬意と感謝を申し上げると共に、この45年という歴史の重さを実感している所存です。

  現役メンバー全員で、(社)酒田青年会議所の歩んできた45年という歴史を振り返りながら、この愛する郷土を元氣に創り上げ、そして発展させていくこと。また、まちを元氣にするということは私たち一人ひとりが明るく元氣で活動することだと思い、この1年間いや、50年後、100年後の(社)酒田青年会議所の未来を創造していこうではありませんか。



『 組織力 』〜 仲間と共に行動し実践する 〜

「 組織とは人間の手と同じなんだ。手のひらの先に指がある。組織の土台は手のひら。指はその組織に所属している仲間なんだ。」まだ私が社会に出て数年。父から社業をまかされ、何も分からぬまま立ち往生していた時、ある方からこのような言葉を頂きました。その当時、会社を経営する父が突然の引退宣言。十数名の社員が私を不安な目で見つめていました。父は「 やりたくなければやらなくていい。やりたいならやりなさい。」とだけ残し、引退宣言をした翌日から会社に来なくなりました。

  当時、私は26歳。父からの引き継ぎや教えなどは殆どなく、仕事も会社組織というものもまったく分かっておりませんでした。そんな状況で、ただ信じるものは残された社員だけだったはずが、当時の私にはその大切ささえも何一つ理解できていなかった為、当然の如く私の前で社員はバラバラ。仕事もうまくいかず、売り上げも半減。途方にくれていたときにその言葉に出逢ったのです。

「 同じ人間なんていないんだよ。人間は指と同じ。太くて短い指もあれば細くて長い指もある。5本それぞれ違った指だからこそ、うまくバランスがとれて、手は何でも作ることができるし、つかむことができるんだ。もし5本が同じ太さ、長さだったら?きっと器用な手としての役割を果たさない。組織とはね、手と同じなんだよ。」



  この言葉との出逢いが組織の大切さや役割を改めて私に氣付かせてくれました。

「 組織とは手と同じ。」と、思いはじめてから私の社員に対する考え方や、個々の長所短所の分析、それをふまえた役割分担、指示の出し方を少しずつ変えていき、その結果社員一人ひとりの個性が会社を創り上げ、得意不得意をお互いにカバーし合いながら、同じ目標を達成させる仲間として変わっていきました。そしてなんとか今日まで社会活動を行ってきた経緯があります。

 青年会議所にも同じ事が言えると思います。様々な想い、個性を持った人間が入会し、志をひとつにし、まちづくり、ひとづくりの為に真剣に向き合い、語り合い、ぶつかり合い、長所短所を引き出し合いカバーし合いながら、同じ目標に向かって運動している団体だと。お互いがそれぞれの個性を認め、尊敬できる何かひとつの力を持っていれば、メンバー全員が成長することができ、この(社)酒田青年会議所はもとより、愛する郷土も更なる飛躍を遂げることができるはずです。

「 そんな素晴らしい仲間がいるからこそ酒田青年会議所は様々なことに挑戦できるんだ 」


『 創造力 』~ 市民参加型の酒田まつりから
        市民が誇れる酒田のシンボルへ ~


 

 401年もの年月の間、一度も途切れることなく続いた酒田まつり。この長い歴史の一つひとつに先人たちの想いが詰まっており、その歴史は決して平坦なものばかりではなかったはずです。そして4年前、約100年ぶりに復活した「立て山鉾」。これらすべてが、とても偉大なことであり、酒田の財産であることを子供たちに伝えていかなければなりません。酒田まつりの価値そのものを・・・。


 私は遊佐町出身で、現在も遊佐町に住んでいます。幼少のころ、5月の連休を過ぎた頃から心なしか胸が躍る感覚を今でも覚えています。小さいころは、家族と一緒に酒田まつりを見に行き、中学生、高校生のころは友人と見に行きました。その頃は、「酒田まつり=屋台」という印象がとても強く、様々な催し物や山車パレードなどはあまり記憶に残ってないのが事実です。個人的主観ですが、現在の子供たちも恐らく大半が、私の少年時代の様な感じではないのでしょうか。

 私は、(社)酒田青年会議所に入会して初めて酒田まつりに参加し、そして、酒田まつりの素晴らしさを体感することが出来ました。青年会議所に入会したことがきっかけで酒田まつりに出逢い、感動を味わうことが出来たのです。私と同じ、市民や子供たちも何かきっかけがなければ参加出来ないし、記憶にも残らないでしょう。逆にきっかけを与え、参加することが出来れば、酒田まつりの素晴らしさや大切さを知り、心から「感動」、「感激」するという財産を手にすることが出来るのです。ですから、私はそのきっかけづくりを積極的に行っていき、酒田まつりに参加することで、「感動」と「感激」を市民の方々と共有したいと思います。


 401年と長きに渡り続いてきた酒田まつり。一度も休むことなく行われてきたこの喜ばしい歴史は、全国を見回してもまずありません。そして、酒田まつりを鮮やかに巡行した「立て山鉾」。名実共に、酒田まつりのシンボルとなったこの「立て山鉾」が、酒田まつりだけのものではなく、「酒田のシンボル」となるようにしっかりと運動指針を構築したいと考えます。そして、策定することをもとに、我々の運動を広く市民の方々へ伝え、多くの方々から運動に参加してもらい、「感動」と「感激」そして、「感謝」を共有したい。また、何故「立て山鉾」なのかを理解して頂くことも不可欠ですので、広報活動・情報発信にも重点を置き、積極的に我々の運動を市民へ向け発信していきます。それと共に、市民の方々にも本来、誰の為のまつりなのかをもう一度考えて頂く機会を設け、「酒田に酒田まつりあり!」と堂々と語り伝える酒田まつりにします。


 もっともっとこの酒田を愛し、良くしたいと願い、「酒田に生まれて良かった。酒田に住んでよかった。」と市民の方々はもちろん、酒田から離れて行った方々にもそう思ってもらえるような「市民参加型の酒田まつり」の実現に向け創造力を発揮し行動しようではありませんか。


「 酒田まつりに行こうよ! 」から「 酒田まつりに出ようよ!! 」へ




 

『 北庄内青年経済人力 』
  ~ 未来の北庄内を担うリーダーたちへ ~



 「景気はどうですか?」、「良くないね…」このような会話を社業でも、JCメンバーの間でもよく耳にします。また、JCメンバーと話をする時に【この人は社業の経営内容とか分かっているのだろうか。JC運動において会社に何を持ち帰っているのだろうか。】と実際考えさせられる機会が何度もあります。


 私は、JC運動をする前にまずは「仕事」、そして「家庭」を大切にし、その次に「JC運動」をするのが本来あるべきJAYCEEの姿である、と事あるごとにJCメンバーに話をしております。


  JCメンバーの多数は自分が所属している会社から「出向」させてもらい、その会社のリーダーは、会社では経験できないものを「JC運動」で経験し、その経験を持ち帰ってもらいたいとの思いで輩出しているものだと思います。しかしながらどうでしょう。実際、会社に持ち帰って少しでも「JC運動」の話をしているJCメンバーは、何名いるのでしょうか。また、景気が悪いなどと言っておきながら自分の会社の経営内容を把握しているJCメンバーは何名いるのでしょうか。実際に、自分が活動できる心臓部(会社)をよく見ることができれば、もっと社会活動をしっかりと重心を下げ、地に足をつけて活動ができるはずです。

 いつトンネルを抜けるか分からない日本経済。様々な職種の人間が集う青年会議所。そのような場で、意見交換や助け合いが出来るということは素晴らしいことです。しかし、これらをうまく活用できていないJCメンバーも少なくありません。もっとメンバー同士で仕事の話や悩みを打ち明け、共に成長していくべきです。

 今年度は、JCメンバーに向け「北庄内青年経済人」を育成したいとの想いで、ビジネス系内部研修委員会を設けました。これは、「会社経営・会社の仕組み」を学び、地元経済人との対話を行うことにより、「北庄内青年経済人」としての基礎を学ぶことを目的と考えております。また、内部研修に限らず、JC運動を行った経験、実績を輩出して頂いている企業様、ご家族の方々に情報を伝える手法を提唱し、青年会議所運動を支えて頂いている方々へお返しすることをお約束します。


 我々は、青年会議所という組織に誇りを持つべきだと思います。そして、JC運動・JC活動に可能性や価値を感じ、今まで以上に「北庄内青年経済人」としての英知を養って力をつけていこうではありませんか。


 また、新たな我々の「仲間」を一人でも多く増やしていくことも急務であると考えます。昨今、全国的に会員数の減少に歯止めが掛からない状況の中、全国708青年会議所のうち、30数青年会議所は会員数を増やし続けているという実績があります。それはなぜでしょうか。「会員拡大たるやひとつの事業」として捉え、運動している青年会議所だからです。ただ誘って入会させればよいということではなく、我々の運動・活動を分かりやすく理解させ、しっかりとした姿勢を見せ、今後の酒田のリーダーとなるべく人材を仲間にしていきましょう。

 6年前、(社)酒田青年会議所は鳥海青年会議所と合併しました。しかしながら現在、北庄内地域からの会員が激減しています。合併後、この酒田から遊佐までの広域な地域を「北庄内」と称し、運動しているわけですから、しっかりと庄内北部の20歳から40歳までの青年層に我々のJC運動・JC活動を広げ、多くの仲間が入会し、新しい風を吹かせてくれることを期待してやみません。




 

『 青少年力 』
  ~ 目と目を合わせて笑顔でいられる青少年事業 ~


   私は、小さい頃から様々な勉強、スポーツ、それにかけがえのない多くの友人と出会い、とても貴重な経験をしてきました。今ではその少年時代の経験が、私の「力」となり、「心の芯」となっています。そして、「興味」持って行動する氣持ちを持ち、何事にも全力で向き合ってきたことすべてがはじまりだと自負しています。



 それには「興味」を持つこと、持たせることの中でも、「ひと」に興味を持たせることが今一番、子供たちに必要なことではないかと考えます。昨今、「ひと」とコミュニケーションをとる事が苦手な子供たちが多く実在し、自分の中に閉じこもってしまっている子供たちが多くなっているのではないのでしょうか。また、大人も同じことを言えると思います。教育とは親が子に教えてあげることです。先生が教えることも大事ですが、自分自身、子を持つ親として、子に伝えなければならないことは沢山あると感じています。しかしながら、子を持つ親自身がコミュニケーションをとる事に難色をしめし、自分さえよければ他は関係ないと思っている親もいます。それでは子供たちがかわいそうです。親子間のコミュニケーションをしっかり確立し、愛情を注いでやる、守ってやることが必要ではないでしょうか。また我々、大人が力強く生きていく背中を見せ、子供たちに感動を与え、興味を抱かせることは本当に大切なことだと思います。
 

 今年度、青少年系委員会では、様々な「心」を持った多くの子供たちと出会い、目標を定め、その目標に向かってコミュニケーションをとり、「興味を持ち一生懸命になれること」の素晴らしさを通年事業を通して展開し、皆が共に「感動」、「感激」、「感謝」を体感し、子供たちの笑顔が絶えない事業をおこないます。

「 ひと 」と「 ひと 」


「 目 」と「 目 」


「 声 」と「 声 」


 「ひと」と「ひと」とがお互い目を見合い、声を出し言葉を交わし、真剣にそして楽しくコニュニケーションを取ることが出来たなら、「感動」「感激」「感謝」を子供たちは噛み締めることができるはずですし、周りにいる皆も幸せになるはずです。

 酒田には素晴らしい自然や伝統文化があります。その沢山ある財産のなかで子供たちは学び、ここ北庄内に生まれ育った子供たちの心に誇りと感謝という氣持ちを芽生えさせることが必要ではないかと考え、青少年育成事業を展開します。



 

『 自然力 』
  ~ 破壊型「人間活動」から自然再生保全型の「人間活動」へ ~


 私は昨年、(公)日本青年会議所東北地区協議会のゼミナール委員会へ出向させて頂きました。ゼミナール委員会では、東北6県の自然環境の現状と各県で行われている自然環境を維持していく活動(再生事業等)を学ぶことを主として活動してまいりました。東北地方はまだまだ自然豊かだと思っていたことがすべて否定され、都心部からのゴミの不法投棄や海岸地域での漂着ゴミ問題、温暖化による気候の変化、海産物の不漁、農作物の不作等、様々な弊害が東北各地で起きておりました。その状態の悪さはわたしの目から見てもとても深刻で今すぐにでも対処しなければならない状況の地域もありました。

 そして、ここ庄内も例外ではなく、遠くから見ていると分かりませんが目を見開いて近くで見ると大きな問題が多く山積している状態です。母なる最上川河口付近ではゴミが散乱し、他の地域と同じ様に、海岸にはどこから流れてきたか分からないほどの大量の漂着ゴミ。近年ではクラゲの大量発生。地元の鳥海山へ足を運べば不法投棄のゴミが山積みになっているなど。昨年の夏の異常気象も記憶に新しいことかと思います。


 上記の様々な環境問題が取りざたされているなか最大の環境問題は「地球温暖化問題」だと思います。近年の急激な「地球温暖化」とそれに伴う地球環境変動や生物多様性の減少が「人間活動」に起因することは明らかです。さらに自然環境破壊と生態系サービスの減少により人の健康や生食物に多大な悪影響を与えていると思います。


 ですから、自然環境問題は、社会や人類の「持続性」にかかわる国際的課題であり、「持続性」の実現の為には、環境破壊型「人間活動」を見直し、市民参加による地域に根ざした自然再生保全型の「人間活動」への転換が急務だと考えます。

 そこで今年度は、環境系委員会を中心に全メンバーで「持続可能な環境共生社会」の実現に貢献するための方法を検討し、市民の方々へ発信する事業を展開します。


 私たちは1年間をかけて、ここ愛する郷土の素晴らしい自然環境を未来の子供たちへ繋いでいかなければなりません。先人たちが創り上げてくれた自然豊かな庄内の素晴らしい宝を後世に引き継ぐべく、関係省庁、行政、他団体の方々、市民の方々と一緒になって庄内の自然環境を守るべくひとつのアクションを(社)酒田青年会議所から発信していきます。



 

『 新たなる価値力 』
  ~ 新しい組織と運動への挑戦 ~


 全国の青年会議所で、公益社団法人格への移行が進んでいるなか、我々(社)酒田青年会議所も今年度から、2012年の公益社団法人格移行への準備に取り掛かります。私たち青年会議所における公益社団法人格取得の目的とは、社会の負託と信頼に応え、「明るい豊かな社会」を実現するためであり、「公益社団法人格取得」はあくまでも「まちづくり・ひとづくり」のための手段・通過点であり、「取得」が目的ではありません。(社)酒田青年会議所は2009年度8月の総会で、公益社団法人格を取得するという決議を全会一致で採択しました。今年度は公益社団法人格取得準備室を設け、しっかりと各事業の内容を精査し、会計及び財務諸表の整備等実務的な面での準備を行い、2011年度中の申請を行います。また今回、青年会議所活動を再構築するよい機会だと認識し、自己満足から脱却した真の青年会議所を目指します。


 1988年に、日本海夕陽ラインシンポジウムが初めて開催されてから、22年間続いてきた夕陽ラインネットワーク協議会のあり方を昨年一度見直しました。その背景には、この運動により高速自動車道が開通した地域と、まだ未開通の地域との間に温度差が生じてきてしまったためです。先輩諸兄が長年に渡り尽力し、日本海沿岸高速自動車道全線開通へあと少しのところまでこぎ付けていると確信しておりますが、ここで一度、手綱をしっかりと握り締め、新たな出発をと考えております。また、夕陽ラインネットッワーク協議会は日沿道を推進するだけではなく、所属して頂く青年会議所の交流の場として、また情報交換の場として様々な事業展開を考えてまいります。



 

『 終わりに 』



 改めて、自分自身の人生を振り返りますと、「ひと」との出会いがすべてだと思いました。この地に生まれていなかったら、今まで出会っていたひととはまずは出会うこうとはなかったでしょう。(社)酒田青年会議所に入会させて頂いたこともそうです。多くの先輩から様々な知識を学び、時には厳しくご指導を頂いたこともあり、悔しくて涙を流したこともありました。しかし結果、先輩の言っていることが正しく、素晴らしい事業をおこなうことができました。前しか見ず、時にはブレーキをかけてくれた先輩。力量不足なところをカバーしてくれたJCメンバー。「学びの場として」「出会いの場として」「繋がりの場として」一つひとつの事柄に感動し感激し感謝しています。


 今、氣付くとその先輩の位置に立っています。とても不思議な氣持ちです。今まで先輩の背中を見てきた私が、背中を見られている立場にいることに対して誇りに思い、組織とはなんたるものか、真のリーダーとはを、1年間かけて自分自身に問いかけていきたいと思います。そのためには、JCメンバー一人ひとりの氣概と行動力が必要です。社会経済は不安定なまま先行きが見えません。愛してやまないここ北庄内もその渦に巻き込まれています。若者たちは、生まれ育った地域に、家族や多くの仲間と共に生活を送りたいと願っていますが、働く場所さえなく仕方なく都会へ離れていってしまいます。少子高齢化や過疎化は自然現象なのでしょうか。私は、ここ庄内地方はとても住みやすく、子育てにも生活をするにも日本一の地域だと思います。皆でもっと元氣を出し、地域力を発見し発達させ、地域を活性化させることで若者が集えるまちに変貌するだろうし、お年寄りも安心・安全に過ごせる魅力ある元氣なまちになると思います。


 創立45年周年という尊い歴史を基に礎を確かに、新たなる飛躍へ向け一歩を踏み出そうではありませんか。

 
「 まちを元氣にするということは私たち一人ひとりが明るく元氣で活動することだ 」


 その先には必ず、「 感動 」「 感激 」「 感謝 」が待ち構えていると確信します。